Serena*Mのあたまのなかみ。
NARUTO/鬼鮫
片思い?の鬼鮫さんの話。
やっぱり小南は強いんですよ。
片思い?の鬼鮫さんの話。
やっぱり小南は強いんですよ。
干柿鬼鮫はよく気が付く男である。
それは暁の共通認識だ。
飛段が脱衣所で服を脱ぎ散らかせば「ちゃんと洗濯機に入れて下さい」そう汚れ物を拾い、
粘土のカスの散るダイニングテーブルを「もう!後片付けまでしてこその“芸術家”ですよ」注意する。
小南には「今流行ってるスイーツらしいです」土産にデコレーションされたマカロンを渡し、サソリには「無理が利く身体だと存じていますが、あまり栄養剤ばかりに頼らないでくださいね」買い置きの兵糧丸の在庫を数えた。
彼がアジトに居るといつも其処は清潔で暖かで、居心地の良い空間になった。
今日も早い時間から水遁を使って布団を洗う鬼鮫に、傍らで眺めていたイタチが呟く。
「…本当に、お前はマメな男だな」
昨日の夜も彼に塗り直して貰った指先のネイルは艶やかで、はみ出た所は一箇所も無い。
初めの頃こそ「自分でやる」強がったイタチだったが、鬼鮫に任せた方が早いし彼も嫌がる素振りも無かったので「やりますよ」言われた言葉に甘えたのだ。代わりにイタチも彼の爪を塗ろうとするのだが、「自分で出来ますから」そう言われてしまってはただ眺める事しか出来ない。体躯の良い男が背中を丸めて爪の手入れをする姿は随分と滑稽だった。
「そうですか?
お天気が続くと聞いて、やる気が出ただけです」
イタチの言葉に鬼鮫は微笑う。
今洗っているのは飛段と角都の布団、デイダラとサソリのものは先ほど洗い終えて向こうの物干しに干してある。
小南のは気に入った柔軟剤があるらしく、持ってくるから待っててと言われてしまった。
「午後からは買い出しに行きましょう、イタチさん」
「…? オレも頭数に入っているのか??」
「だって今日は卵が安いんですよ。
最近、卵が随分と値上がりしてしまって…」
「そ、そうか…」
血霧の里の狂人からの“卵が安い”にイタチは驚くものの、戦闘中の彼の表情も知ってたからどちらも“干柿鬼鮫”なのだと1人頷く。
「手伝おう」
立ち上がってあまり組まない水遁の印を結んだイタチに「助かります」鬼鮫は言うと、2人は並んで布団を洗うのだった。
*
イタチがゼツと長期の任務に行って1ヶ月。
暁のアジトはリーダーと小南によって最低限の清潔さは保たれていたが、随分と荒れた印象だった。
鬼鮫も任務で不在がちなのかと言えばそうではない。
2,3日アジトを開ける日もあったものの、基本的には長期に任務で出掛けることもなく普段通りアジトで生活していた。
なのに、だ。
台所には食器が重なり(リーダーが夜中に片付けているらしい)、
風呂掃除は飛段が仕方なくやっているものの備品の補充は無く、トイレにはトイレットペーパーの芯が転がっている。
勿論、食事だって酷い有様でめいめいに好きなものを食べるか兵糧丸をつまむかが基本だった。
鬼鮫が「掃除しますよ!」天気の良い日にハタキを振り回す事もなく、テーブルにはラーメンのつゆがこびり付いたまま。
綺麗好きだと思っていた鬼鮫が、ソファを陣取りポテトチップスをつまんでいる。傍らには炭酸飲料も置かれていて、休みの日の飛段を彷彿とさせる姿だった。
「…好い加減、掃除したいんだけど」
掃除機を持った小南に突かれて「すみません」鬼鮫がソファの上で体育座りを作る。
「どうしたの、貴方がこんな自堕落だなんて珍しいじゃない」
ローテーブルの下を掃除し始めた小南に、鬼鮫は立ち上がるとテーブルを退かす。
“自堕落”とは言っても彼の根はやはり紳士だった。
つい先日、任務の帰りに賞金首だと角都に連れられた先は小さな子供を持つ忍で、不本意ながらも子供ともども命を散らせたと聞いている。戦闘狂ではあるけれど、角都より“マトモ”理性を持ち合わせる鬼鮫にはその行動が心に引っ掛かったのだろうか。小南も気にしていた。
「…いえ、本来の私なんてこんなものですよ」
カーペットの掃除を終えるのを見届けて、またテーブルを戻した鬼鮫は薄く笑う。
「私には、戦いくらいしか取り柄はありませんし」
「…そう?
ここでは随分と生き生きと“お母さん”してたと思うけど」
掃除機を置いてソファの隣に座った小南に、鬼鮫は少し腰をずらした。
「…お母さん、ですか。フフ…」
「てっきり世話を焼くのが好きなのかと思ってたわ」
食べかけのポテトチップスに手を伸ばすと「どうぞ」鬼鮫が袋の口を向ける。
「……小南も、リーダーと2人きりの時と、私たちと一緒の時と、
リーダーに対する態度は少しは変わるでしょう?」
――暁と言う組織、それは世界の平和を願った雨隠れの若者で結成された組織だと鬼鮫は知っていた。
リーダーと小南がその創設者であると、酔っぱらったトビが漏らしたのだ。
「…そうね、少しは違うかもしれないわね」
ぱり、ポテトチップスを食んだ小南は頷く。
リーダーの中身、それは幼馴染である長門で、彼と一緒の時は天使の小南ではなく冗談を言い合って笑う少女になった。
「それと一緒です。
イタチさんが居るから、私も少しは“礼儀正しく”あろうとする…」
好きな人の前だと、胸を張りたいでしょう?
おどけた鬼鮫に、小南は目を細めた。
オレンジ色の、夢を語った彼の人も妙に格好つけたがりだったっけ。
勿論、今傍に居る長門だって。
――男って、そんな生き物なのかしらね。
小南は悟ると「そうね」頷いて立ち上がる。
「昨日の夜ね、ゼツが来たの。
そろそろ帰れそうって。
だから貴方もその不精髭、どうにかしたら?」
意味深に口角を上げた小南に、「敵いませんねぇ」鬼鮫は頭を掻く。
「…今夜は、少し“真面目”に食事の支度をしますね」
笑った鬼鮫に、そうだと嬉しいわ、小南も返して掃除の続きを始めるのだった。
干柿鬼鮫、梅仕事も厭わない男。
けれど彼が誠実であるのは、イタチの前で作る“理想の”姿だからなのだった。
彼の真意は、まだ――小南しか知らない。
*おしまい*
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