Serena*Mのあたまのなかみ。
ハイキュー/黒大
リップックリーム×黒大
上京して東京に暮らす大地さんと相変わらず実家から学校に通う鉄郎さん。
程よい距離が長続きする秘訣です。
リップックリーム×黒大
上京して東京に暮らす大地さんと相変わらず実家から学校に通う鉄郎さん。
程よい距離が長続きする秘訣です。
「ごちそーさまでしたっ」
「ごちそーさん!」
真四角のこたつに向かって両手を合わせた鉄郎と大地は小さく空の容器に頭を下げる。
並んだ大ぶりの椀は2つとも空で、慣れたように鉄郎が器を重ねると大地が立ち上がってそれを受け取った。
「鉄郎、出汁変えた? なんか前より美味くなってる気がする」
「え、気付いちゃった? 九州の方の出汁買ってみたの。うどんならこっちの方が合うかな~って」
場所は大地の住むアパート。
大地も自炊をするので食事の支度は嫌いではなかったが、恋人が来ると彼がこうして手料理を振る舞うのが常になっていた。『料理、嫌いじゃないし♡』その言葉に甘えている部分もある。
代わりに後片付けをするのは大地の役目で、だからこうして彼は食器を台所に運ぶのだった。
「コーヒーとほうじ茶と…どっちがいい?」
顔を覗かせた大地にこたつに温もりながら鉄郎は短く答える。
「ほ~じ茶。昨日買った羊羹と食べよ」
デートに出掛けた帰り道、乗り換えの大きな駅の構内で和菓子フェアを開催していたから「おやつに食べよう」そう鉄郎が買ったものだ。甘いお菓子よりも肉の方にテンションが上がる年頃ではあったが、祖母と暮らす鉄郎は和菓子に妙に詳しい。「これ美味しいところ」そう言われてしまっては、大地も無下に出来ずに購入を許してしまった。
「ん」
恋人の答えに大地は頷くとまた顔を引っ込める。
じゃばじゃばと食器を洗う音にお湯の沸く音、のんびりした午後の風景に「いいなぁ」鉄郎の顔が緩む。と、
「おまたせ」
お盆にマグカップと小さな羊羹を乗せて大地が現れた。
「金粉掛かってた!」
切り分けた羊羹を鉄郎の前に置きながら大地もこたつに足を入れる。ひやりとした爪先から逃れるように鉄郎が足を避けると大地は白い歯を見せる。
「避けるなんてひでーの。あんなに好き、なんて言ってたのは嘘か」
「ソレとコレとは別ですぅ」
昨晩の情事を引き合いに出して唇を尖らせた鉄郎に、大地は困ったような顔を作って恋人を小突く。
金の粉で彩られた羊羹をフォークで分けると、ゆっくりと鉄郎は口に運んだ。
「…んま」
鉄郎に続けて大地も羊羹を口にする。
「美味しい」
「やっぱ有名なところは外しませんなぁ」
「なんか包装も豪華だったよ。虎の絵が描いてあった」
「強そ~。小鳥さんなんて一発じゃん」
「いやいや虎は子猫ちゃんじゃありませんし」
冗談を言って笑って、静かに午後の時間は過ぎる。
ほうじ茶を飲み終えて乾燥した唇を潤そうと鉄郎は鞄からリップクリームを取り出す。くるりと下の部分を捻っても、それ以上にクリームが伸びる事はなかった。
「あ、大地。商店街に薬局ってあったよね?」
「なした?」
「ん、リップ切れたからついでに買って帰る」
「あー…冬場は乾燥するもんなぁ」
見せられたリップに大地は頷く。
「確か買い置きのあったから、それで良かったらやるよ。
別に拘りないだろ?」
低いチェストの上、外した腕時計なんかと一緒に無造作に置かれたリップに鉄郎は視線を走らせる。
量販店でよく見かける真っ青なパッケージの其れは“赤ちゃんからおばあちゃんまで”そんな言葉が添えられている、誰もが1度は使ったことのある銘柄のものだ。鉄郎も、一時期はハンドクリームでお世話になった記憶がある。
「んじゃ、それちょうだい」
指差した鉄郎に「いやいや」大地は首を振る。
「使いかけだし」
続けて断ったが、鉄郎は身体を伸ばすとそのリップクリームを手に取った。
「いや、だから…」
溜め息を吐いた恋人を意に介さず、鉄郎はキャップを開けると中のリップをくるりと繰り出す。
不格好な形のてっぺん部分をなだらかにするように唇に塗り付けて、鉄郎はご機嫌だ。
「ば…それ…っ!」
止めよう手を伸ばした大地を躱すように身を捻ると、ニンマリと鉄郎は人の悪い笑みを浮かべるのだった。
「……間接キッス♡」
*おしまい*
「ごちそーさん!」
真四角のこたつに向かって両手を合わせた鉄郎と大地は小さく空の容器に頭を下げる。
並んだ大ぶりの椀は2つとも空で、慣れたように鉄郎が器を重ねると大地が立ち上がってそれを受け取った。
「鉄郎、出汁変えた? なんか前より美味くなってる気がする」
「え、気付いちゃった? 九州の方の出汁買ってみたの。うどんならこっちの方が合うかな~って」
場所は大地の住むアパート。
大地も自炊をするので食事の支度は嫌いではなかったが、恋人が来ると彼がこうして手料理を振る舞うのが常になっていた。『料理、嫌いじゃないし♡』その言葉に甘えている部分もある。
代わりに後片付けをするのは大地の役目で、だからこうして彼は食器を台所に運ぶのだった。
「コーヒーとほうじ茶と…どっちがいい?」
顔を覗かせた大地にこたつに温もりながら鉄郎は短く答える。
「ほ~じ茶。昨日買った羊羹と食べよ」
デートに出掛けた帰り道、乗り換えの大きな駅の構内で和菓子フェアを開催していたから「おやつに食べよう」そう鉄郎が買ったものだ。甘いお菓子よりも肉の方にテンションが上がる年頃ではあったが、祖母と暮らす鉄郎は和菓子に妙に詳しい。「これ美味しいところ」そう言われてしまっては、大地も無下に出来ずに購入を許してしまった。
「ん」
恋人の答えに大地は頷くとまた顔を引っ込める。
じゃばじゃばと食器を洗う音にお湯の沸く音、のんびりした午後の風景に「いいなぁ」鉄郎の顔が緩む。と、
「おまたせ」
お盆にマグカップと小さな羊羹を乗せて大地が現れた。
「金粉掛かってた!」
切り分けた羊羹を鉄郎の前に置きながら大地もこたつに足を入れる。ひやりとした爪先から逃れるように鉄郎が足を避けると大地は白い歯を見せる。
「避けるなんてひでーの。あんなに好き、なんて言ってたのは嘘か」
「ソレとコレとは別ですぅ」
昨晩の情事を引き合いに出して唇を尖らせた鉄郎に、大地は困ったような顔を作って恋人を小突く。
金の粉で彩られた羊羹をフォークで分けると、ゆっくりと鉄郎は口に運んだ。
「…んま」
鉄郎に続けて大地も羊羹を口にする。
「美味しい」
「やっぱ有名なところは外しませんなぁ」
「なんか包装も豪華だったよ。虎の絵が描いてあった」
「強そ~。小鳥さんなんて一発じゃん」
「いやいや虎は子猫ちゃんじゃありませんし」
冗談を言って笑って、静かに午後の時間は過ぎる。
ほうじ茶を飲み終えて乾燥した唇を潤そうと鉄郎は鞄からリップクリームを取り出す。くるりと下の部分を捻っても、それ以上にクリームが伸びる事はなかった。
「あ、大地。商店街に薬局ってあったよね?」
「なした?」
「ん、リップ切れたからついでに買って帰る」
「あー…冬場は乾燥するもんなぁ」
見せられたリップに大地は頷く。
「確か買い置きのあったから、それで良かったらやるよ。
別に拘りないだろ?」
低いチェストの上、外した腕時計なんかと一緒に無造作に置かれたリップに鉄郎は視線を走らせる。
量販店でよく見かける真っ青なパッケージの其れは“赤ちゃんからおばあちゃんまで”そんな言葉が添えられている、誰もが1度は使ったことのある銘柄のものだ。鉄郎も、一時期はハンドクリームでお世話になった記憶がある。
「んじゃ、それちょうだい」
指差した鉄郎に「いやいや」大地は首を振る。
「使いかけだし」
続けて断ったが、鉄郎は身体を伸ばすとそのリップクリームを手に取った。
「いや、だから…」
溜め息を吐いた恋人を意に介さず、鉄郎はキャップを開けると中のリップをくるりと繰り出す。
不格好な形のてっぺん部分をなだらかにするように唇に塗り付けて、鉄郎はご機嫌だ。
「ば…それ…っ!」
止めよう手を伸ばした大地を躱すように身を捻ると、ニンマリと鉄郎は人の悪い笑みを浮かべるのだった。
「……間接キッス♡」
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