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Serena*Mのあたまのなかみ。
NARUTO/カカイル

個人サイトやってた頃だと思うから、多分19才あたりの作品。
昔のUSB見てたら発掘したので供養。





「オレは、何のために戦うんでしょうねぇ」

梅昆布茶を啜りながら、呑気にその人は呟いた。
暖かな午後のうら下がり。
縁側に撒いた餌に、小さな鳥が啄ばみに来ていた。

「はい?」

突然の質問に、洗いかけの茶碗を桶に取り落とす。

「いや、ね。思ったんですよ。」

もう一度、呑気にその人はまた同じ事を繰り返した。

――オレは、何の為に戦うんでしょう――

「……任務、だから?」

苦笑しながら答えた俺に、その人も微笑んだ。

「……そう、ですよねぇ。」

洗い物を片して、タオルで手を拭く。
のんびりと寛ぐその人の隣に腰を下ろすと、その人は甘えたように膝に頭を乗せた。――見た目からは想像もつかない、跳ねた猫っ毛からは太陽の香りがする。

「おかわり、要りますか?」

縁側に置かれた茶碗に、お茶が無いことに気付く。立ち上がりかけた俺に、その人は答えた。

「このままが良いです。」

――先生の膝枕、気持ち良いんです。
 
暫くして、その人は話し始めた。

「――さっき、夢を見たんです。
 幾ら洗っても、血の付いた手が綺麗にならない夢。」

その人は右手を光に翳した。……白くて、細い手。男性にしては、華奢に見える。その手には、細かな傷が沢山、付けられていた。
その人が、血だらけの姿で任務から帰るのは、良くあることだった。徹夜での任務に、少しだけ頬をやつれさせて『ただいま』と、私を抱きしめる。その人の身体に付いているのは、返り血だらけで、その人自身の傷は殆ど、無い。
けれど、そんな姿で帰られる朝は、辛い。
中忍の自分が知らない世界。この人は遠い人なんだ、と現実を感じる瞬間。

「服は、先生に綺麗に洗って貰えるんです。」

――血のりの着いた服を、洗うのも慣れた。

「けれど、自分に付いた血は、取れないんです。いくら丁寧に石鹸を泡立てても。あの鉄の匂いは。」

その人は、空いた片方の手も太陽に翳した。

「この傷、いつの間に付いたんでしょうね。」

クナイの、突き傷だった。その人は欠伸を一つ、する。

「昔は、任務で死んでもイイと思ってました。」

膝に頬を摺り寄せて、その人は続ける。

「知らない里の忍を、何人も、何人も殺しました。それが任務だったとは言え、無抵抗の忍も殺しました――」

「……」

「――だから、いつ殺されてもいい、と思ってたんです。」

その人は其処まで言うと、黙った。

「……先生?」

覗きこむと、その人は腰に手をまわした。

「――怖いんです。」

「――怖い?」

その人は、また、俺の方を向いた。ゆっくりと瞳を開ける。片目の写輪眼が、俺を見据える。

「帰れなくなるのが、怖いんです。」

もう一度、その人は繰り返した。

「帰れなくなると、アナタに会えなくなる。
アナタを失ってしまう。――それが、怖いんです。」

――俺も。

「――俺も、怖いですよ。」

告白した俺に、その人の目が少し、見開いた。

「貴方が帰らない夢を、見ます。
ご飯を作って、幾ら待っていても貴方は来ない。
殺伐とした森で、貴方は倒れてるんです。」


そのリアルな森、鮮血。動かない、貴方の肉体。
はっと跳ね起きて、夜が明けたと気付く――
俯いた俺に、その人は手を伸ばした。

「――大丈夫。オレは、帰ってきます。」

首を傾げた俺に、その人は続ける。

「オレは、アナタにこんな顔をさせるために生まれてきたワケじゃありません。」

その人は微笑むと、首に手を回した。
 
覚えているのは、柔らかい、唇の感触。梅昆布茶の香り。

――でも、俺はカカシ先生の為に生まれたわけじゃありませんよ?
言ったら、その人は不敵に笑った。

「分かっています。アナタは、オレに愛される為に生まれたんですよ。」

「……なっ!」

真っ赤になった俺に、その人はカラカラと笑う。

「オレはね、イルカ先生の笑う顔が好きなんです。
 ――ずっと、オレの為に笑っていて下さいね。」

「…。」

思わず苦笑した俺に、その人は嬉しそうに抱きつく。
俺はそっと、その人の耳に囁いた。

貴方の喜びが、俺の喜び。
こんな平穏を守るために、貴方は両手を血で染めて帰って来る。
ならば、その手は俺が洗いましょう。
俺にとっても貴方が全てです。

「――好きです、カカシ先生。」




*おしまい*

自分で読んでて「すげぇ萌える!!!!」ってなったけどそりゃ自分で書いたんだもん、好みだよなwwwwwww
そして以前かいたこの話も夢ネタだったので私にとってカカイルと夢は何か惹かれあうものがあるんでしょうね。
※掲載にあたり加筆修正してません…

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