If it was surely a happy future【きっとそれが幸せな未来だったならば】

タイトルから見切り発車。
未来妄想のカラトド（前作はこれ）

「ボクも、好きだよ」

弟のトド松は屈託なく笑う。

『お前が、好きだ』

そう半泣きになって告げたオレに、
お前はそう言って抱きしめてくれた。

「これで、両想いだね」

そんな風に言われたら、もっともっとお前が愛おしくなった。



春はお花見、
夏は海
秋には紅葉狩りへドライブ
冬にはとびっきりのクリスマス



幸せな季節を何度過ごしたろう

繋いだ手の、優しい体温
同じ遺伝子を継いだ筈なのにほんのすこしだけ背の低い弟


『好きだ、トド松』


オレは何度もそう伝えた――


＊


ある夜、気付くと其処にはもう誰の姿もなかった。

おかしいな、さっきまで一緒に寝ていた筈なのに
隣の恋人が居ない

真っ暗な中、彼は愛しい人の名を叫ぶ

「トド松！
　トドまーーーつ！！」

虚空に響くは己の声。

何故、どうして――

深い闇に打ち据えられた




――…って夢を見たんだ。」

カラ松はぽつりと話す。
傍らでスマホをいじっていたトド松がスマホから目を離さないでくすくすと笑った。

「変な夢。
　ボクはずっとカラ松の傍にいるよ」

背中を更に密着させて彼は続ける。

覗いたスマホからは松野家6人のLINE画面で、母の日をどうするかの相談中だった。

「ね、こーゆーのはカラ松が得意なんじゃない？」

雑多に並べられた商材のキラキラした雑貨を見ながら彼は言う。
最近仕入れたばっかりのガラス細工は確かに実家に飾るのには良さそうだった。

「…それでいいのなら」

兄は続ける。

「んじゃぁ、そう返信しとくね」

トド松はいいその細い指をスマホに滑らす。


――あぁ、いつか。
その指に拘束の誓いを立てられたらずっとずっと息苦しさはなくなるのに。


「そうそう、ボクね。
　来月からお店の店長を任されることになったんだぁ」


ほの暗いカラ松の愚想は、トド松の明るい話題に塵に消えた。

「あぁ、じゃぁお祝いしないとな」

ぎゅっと肩を引き寄せると、「ん」トド松がキスで答える。


――そうさ、弟が消えるなんて、ただの夢だ……

群青色の、小花模様のシャツを脱がしながら、彼は弟を押し倒した――



＊了＊


刻々と近づく、別れの瞬間。