パンケーキと君と。

もうリア充って古い言葉らしいっすね。
いつもの材木松。

頼んだパンケーキを待ちながら、ガラスに映った弟の姿を見て、ぼんやりとカラ松は思う。

『…可愛い』

同じユニクロの色違いのコーデだと云うのに、トド松の小物使いは上手い。
無造作に乗せた麦藁帽には100円均一で買って来たリボンでアクセントを付け足し、着古したチノパンだってロールアップさせて流行りモノに見せている。
先日買ったシャツはマリンカラーで今日みたいな夏の盛りの日にはよく似合って見えた。

…と、どうやらカラ松の声は思うばかりでなく、声に出ていたらしい。
ぷくっと頬を膨らませた弟に小突かれる。

「…当たり前でしょ」

――ボクを誰だと思ってるの？　そう続くものかと思ってたけれど、その答えは想像と真逆の言葉だった。

「兄さんと一緒だから、可愛くしてるの」

ちょっとだけ俯いたトド松が、どうも居心地が悪そうで。

「…だって、好きな人と一緒なんだもん。可愛く見られたいでしょ」

そう小さく付け加える。

「！！」

いつものカラ松なら、「そうだなマイブラザー」なんて切り替えしが出来たのだろうけど
今のはあまりに不意打ち過ぎて、目を瞬かせることしか出来なかった。


「お待たせ致しました～！
　チョコバナナパンケーキとコーヒーお持ちしましたぁ～」


二人の沈黙を破ったのは、営業スマイルの店員さんの声。

「ふふふ、インスタに載せよ～っと」

硬直したままのカラ松を尻目に、トド松がパンケーキの撮影を始める。

「ね、兄さん」

彼はちょっとだけ小首を傾げてお得意のポーズを決める。

「この写真『恋人とデートなう』に使ってよ★」

差し出されたのは、1枚の写真。

――あぁ、どうやらオレはずっと弟に逆らえないらしい。

コーヒーを一口啜って、カラ松は頷いた。

「勿論だ、マイブラザー」


＊FIN＊

単に「恋人と居るから可愛く見られたいの」ってトド松を云いたかっただけ。