Have a HAPPY NICEest day!

バギーちゃんお誕生日おめでとう★

その日は、明け方からの大雨で海は時化で、帆を畳んだり荷物を固定させたりと下っ端海賊のシャンクスとバギーは大忙しだった。
名前だけは【見習い】なんて付いているが、その実、只の雑用要員だ。船長含め、目上の奴らから声が掛かれば作業を中断してもそっちに取り掛かる。

お昼前、漸く風の動きが変わり雨脚も弱まった頃、2人はようやく一息吐いて船首の特等席から高い波を眺めていた。右に左に大きく揺れる其処は危険な場所でもあったが、大海原を先陣を切って進むようで好きな場所だった。

「…はァ…」
いつもは明るいバギーが、珍しくため息を吐く。こんな天気だから、気持ちも落ち込んでいるのだろうか？

「どした、バギー？」

傍のシャンクスが雨に濡れた赤髪を揺らした。
毛先から、水滴が滴り落ちる。

「…や、最悪な日だなって思ってよ」

バギーの表情は浮かない。

「最悪？」

シャンクスは首を傾げて、今日がバギーの生まれた日なのを思い出した。
そうだ、1月も前から『誕生日なんだから敬え』『誕生日はオレの仕事を手伝うべき』と顔を合わせればなんやかんやと言われていたのだ。

「いいじゃねぇか、こんな日だって」

シャンクスは呟く。――明け方からの作業で、すっかりとお祝いの言葉を伝えるのを忘れていた。

「よくねェよ…」

隣の青髪が赤い鼻を鳴らす。彼ははバギーの髪が空の青さを閉じ込めたようで好きだった。

「今日が最悪ってコトはな、明日からはこれ以上酷い日が無いって事だ。
今年一年、お前に幸ありますように」

彼は、じっと相方を見つめる。

「バギー。
誕生日、おめでとう」

くしゃっと破顔させたその姿は、まるで太陽のようだとバギーは思う。きっと、彼の髪の毛の色も其れを彷彿とさせるのだろう。

――本当は日が変わればいの一番に伝えたかった。
多少遅くなってしまったが、この気持ちに偽りはない。

突然のシャンクスの言葉に、バギーは驚きに目を丸くする。けれどすぐにニヤリと口の端を歪めた。

「…そうだな。今日が最悪だったら、この一年悪くない」

その時だった。

「てめェら、こっち手伝え！」

船医のクロッカスが二人を呼びつける。

振り向いて二人は了解の意味で手を挙げた。
そして、同時に駆け出す。

365日、晴天もあれば時化もある。
最悪があるから最高もあるもんだと。
見事な発想の転換に驚きと嫉妬を含みながら、
――敵わねぇな。

背中を睨んで、バギーは心の内に呟いた。


海は、雨脚は弱まったものの、今度は突風が吹き荒れるようになっていた――


＊END＊

ゆきのさんへ貢ぎます（笑）

多分10年くらい前にサンゾロ書いて以来だなーワンピース…
口調とか色々間違っててゴメンナサ…！！（さくっ/刺される音）